相良700年の歴史と文化を守り続ける、人吉球磨
2015年、新たに始まった文化庁のプロジェクト「日本遺産」。その第1号として全国17地区と共に認定されたのが熊本県人吉球磨地域です。人吉球磨の日本遺産は57件の文化財で構成され、「相良700年が生んだ保守と進取の文化」と題した大筋のストーリーで紐づけされています。
「相良(さがら)」とは、鎌倉幕府の命を受けてこの地に派遣され、明治維新までの700年もの間統治していた一族です。他領地との戦だけでなく飢饉やそれに伴う一揆など、混迷した時代の中で、ひとつの家系がこのように長きにわたり同じ領地を治め続けた例は全国でも稀です。
相良氏は、はるか昔から続いていた人吉球磨地域の文化を守り、さらに京都や奈良など都から最先端の文化や芸術を取り入れました。この長い治世がもたらした文化・風習は、現在の人吉球磨地域の暮らしの中に脈々と受け継がれ、日常の風景として溶け込んでいます。
日本遺産の認定を受けた57件の文化財には、球磨焼酎や球磨神楽、そして古くから人々の心の拠り所としてきた神社仏閣や仏像があります。
歴史小説家・司馬遼太郎が、その著書『街道をゆく』で、人吉球磨地域のことを「日本でもっとも豊かな隠れ里」と記しています。昔から愛され、守られてきた地域の文化を守りつつも、したたかに先進的な外の文化を吸収しながら歩んできた相良700年の歴史が「もっとも豊かな隠れ里-人吉球磨」に刻まれています。